相合い傘

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バスが止まる。 私と彼は何気にご近所さん。 だから、途中まで一緒に歩いて帰る。 雨は一向にやみそうにない。 私は鞄から折り畳み傘を出す。 淡いベージュで所々レースが施されたこの折り畳み傘は私のお気に入り。 「雨、結構降ってるな」 彼は灰色の雲に覆われた空を見上げて呟く。 「うん。やみそうにないね。」 私も同じように空を見上げる。 雨粒が顔にあたり、私は慌てて傘をさす。 隣にいる彼は私が傘をさしたのを確認すると歩き出す。 「町田くん、傘は?」 私は慌てて追いかける。 「今日、雨降ると思ってなかったから、持ってきてないんだ。」 彼は眉を下げて困ったように笑う。 それを聞いて私は慌てて傘を彼の上にさす。
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