相合い傘

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雲は雫を静かに落とし続ける。 他愛もない会話をしながら私たちは歩く。 私より少し背が高い彼のために私は右手を伸ばして彼の上に傘をさす。 彼の右肩を見て濡れていないのを確認する。 「中畑と話すの久しぶりだな。」 「うん。そうだね。」 私は彼の横顔をそっと盗み見る。 パッチリとした目に、スッと高い鼻。 少し幼げなその顔は私の大好きな人の顔。 フワッと香る彼の匂いが私の心をくすぐる。 「昔は良く話してたのにな。」 彼はそういって目を細めながら私のほうを見る。 「お互い忙しいから仕方ないよ。」 私は慌てて目を反らすと少し俯きながらそう答える。
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