―押せ―

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中に入ると、思ったよりも明るかった。 明るいだけじゃない。白い壁紙や所々に置かれた生け花が、清潔感を漂わせていた。 まるで中は別世界。さっきの職安よりも、格別に良い。 「いらっしゃいませ」 受付の女の子が、直ぐ様声をかけてきた。綺麗な鼻立ちに、大きな目...間違いなく美人と呼べる。 それに、ウグイス嬢のような透き通った声がいい。 年は同じくらいか... 「当社のご利用は初めてですね?派遣の登録で宜しいですか?」 『えっ、あっはい』 思わず見とれて間抜けな声を出してしまったが、女の子は少しも気にすることなく笑顔を返してきた。 まずい...惚れそうだ。 「では、こちらにお名前と生年月日をご記入ください」 そう言って、バインダーに挟まれた記入用紙を渡された。 .
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