―押せ―

9/113
前へ
/688ページ
次へ
我が儘と言われればそれまでだが、俺にも最低条件ってものがある。 ましてや、犯罪者などにはなりたくなかった。 「中野様、何か勘違いをされていませんか?わたくしどもが紹介させて頂く仕事は、決して法に触れるようなものではございませんよ」 予想外の言葉に、太一は顔を持ち上げた。 危ない仕事だとしても、どうせそう言うだろうよ... そう思ったのだが、黒野の顔つきからは、疑わしきものは感じられない。 それどころか、妙な説得力があった。 「それに、身体を酷使する仕事が嫌なのであれば、それ相応の仕事もございます。しかも、そこそこ稼げる仕事ですよ」 『本当ですかっ?』 つい元気よく返事をしてしまい、慌てて口を押さえた。 これでは、断る口実がなくなってしまうではないか。 .
/688ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26679人が本棚に入れています
本棚に追加