―押せ―

15/113
前へ
/688ページ
次へ
「プッシュマンの仕事は以上です」 『えっ、ちょっと待ってください。仕事ってこれだけ?』 「そうです」と、黒野は当たり前のように頭を垂れた。 そんな訳がないだろう。ただボタンを押すだけの仕事など聞いたことがない。 それ以前に、こんなものはわざわざ人を雇ってまで行うことじゃないだろう。 『ちょっと冗談でしょう?こんなの仕事にならないじゃないですか』 「いいえ立派なお仕事でございます。いいですか?一口に仕事と言っても様々あります。そして、どんな仕事にもそれに対して、それぞれの役割というものがございます」 ですから...と、黒野は指を立てた。 「プッシュマンはある過程の中で、ボタンを押すという、重要な役割になる訳です」 ある過程? 『なんですかそれ』と、尋ねると黒野は黙って人差し指を左右に振った。 .
/688ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26679人が本棚に入れています
本棚に追加