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あれは俺が地元の公立高校に入学した日のことだったかな……
「見ろよ航!これが芸術だ!」
「厨二病の間違いだろ」
黒板には2時間掛けて悪友が書き上げた魔法陣があった。
確かに複数の色を使い、寸分違わぬ綺麗な図形が複雑に合わさった魔法陣は確かに芸術と呼べる域なのは確かだ。
本当はこんな普通科の高校じゃなくて芸術専門の高校に言った方が良かった気もする。
本人曰わく、強制して描かされた物に芸術はないとのこと。
「出て来いボインの悪魔!」
悪友は両手を上に上げ、ワカメのようなダンスで魔法陣に祈りを捧げる。
「出て来る訳ないだろ」
ビシッと悪友の胸板を軽く叩いてツッコミを入れる。
「でも本当に何か起きそうな感じはするな」
「だろ」
「どや顔やめい」
まあ、お遊びも済んだし俺達は教室を出るために机にある荷物を取る。
視界の隅にチラッと黒板の魔法陣が見える。
その魔法陣はチョークじゃ有り得ない金色になっていた。
「!!」
魔法陣から巨大な黄金の手が伸び、俺の身体を掴んだ。
「航!!手を伸ばせ!!」
「くっ!!」
俺は助けを求めるように手を前に出した。
しかし……
「航ー!!」
俺はあと数センチのところで悪友の手を掴むことが出来ず、魔法陣の中へと引きずり込まれてしまった。
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