機械めいた夕べには。

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ドアからあの長机まで。 大体、部室の角から角だ。 僕はまた調節ネジを減る方向へ回す。 カチカチ。 障害物が原因でなく、距離がそもそもの原因だったようだ。 一歩歩む度にカチ、カチ、と調節ネジを回しながら香月に近づく。 あと三歩程で香月の下へ行けた。 『Mr.レフトハンド』はそこで覚醒し、漸く作動したのだった。 「たったこの距離か。」 「ち、近いですね…」 「まぁ、そうかもしれんな。」 普段もこの距離に僕らは立っていた筈だ。 でも、今は少し近過ぎるような気がしないでもない。 変わらず香月の白い首に嵌められた首輪『Ms.フェアリー』が、光沢を持って、したり顔に見えた。 香月本人の顔は朱色を孕んでいて、お互い気恥ずかしいみたいだった。
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