機械めいた夕べには。

5/16
前へ
/16ページ
次へ
先輩。無論僕の事だ。 彼女が後輩なのだから、僕が先輩。 当然だ。 しかし、僕は彼女を後輩とは呼ばない。 彼女にはちゃんとした名前があるのだから。 僕にもあるけど。 「香月。一体どうした。今日は読書はしていないのか?」 僕の時間感覚が正しければ、今は六月のはずだ。夏も目前。でないにしても気温は暖かい。 だが、目の前の香月は首にしっかりとマフラーを巻いている。 「そのマフラーよく似合ってるぞ。だが、今の季節にわざわざ見せる物でもないだろう?」 「ち、違いますよっ!これ、先輩がやったんですか!?」 すぽん。巻いていたマフラーをそのまま脱ぐ形で首から除ける。 露わになった香月の白い首。 なんだか官能的だ。 しかし、いつも見ている首とは違う。変わらず白いし、ショートカットの髪の毛がかかっているし、何も変わらないように見える。 しかし、香月の首にはネックレスと呼ぶにはどことなく『Mr.レフトハンド』に似たものが装着されていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加