告白

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一年が過ぎ、二年が過ぎ、十年が過ぎても、彼女はずっと若いままだ。 俺は歳を取った。 窓には紅葉に彩られた街路樹。 またこの季節だね。 彼女が微笑わなくなった季節に今年もなった。 初めて会った時も同じ季節だったね。 あの時の事覚えてる? 君はまだ学生のアルバイトで俺は社会人。 なんでも一所懸命に取り組む君の姿に、いや、今思えばもう好きだったのかもしれない。 一目惚れだったのかなぁ? なぁ、君はどうだったんだい? いつもと変わらない表情の彼女に俺はなんだか気恥ずかしい感情に襲われて照れ笑いをした。 今日は君に大事な話があるんだ。 聞いてくれるかい? 君に出会ってから大分経ったね。 君はまだ若いままだが、俺はもういい歳になったよ。 会社の同僚も結婚を勧めてくるし弱ってるよ。 なぁ、そろそろ君も決心してくれないか? …結婚して欲しい。 俺は君を一生愛したい。 君が俺をいつも一所懸命愛して応援してくれたように、俺も君の力になりたい。 世界中の人が敵になっても私には貴方が必要なのって言ってくれたのを覚えてる? 嬉しかったんだよ。 あの時仕事も行き詰まって君にもひどくあたっていたのに、君がくれたあの一言で俺はどんなに救われたか。 あの時から俺もずっと思っている事がある。 例え君が世界中から嫌われても、例えこのまま意識が戻らなくても、俺には君が必要なんだよ。 …結婚して欲しい。 涙声のプロポーズはきっとほとんど聞き取れなかったと思う。 でも彼女には、彼女だけには届いていたはずだ。 彼女の左手の人差し指はピンと伸びていた。 後日、俺は指輪を彼女の左手の人差し指にはめた。 サイズは少し大きかった。 相変わらずの頼りなさだがきっと彼女は口では怒りつつも顔では微笑って許してくれるに違いない。
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