葛藤

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俺は、毎日仕事の帰りに病院に寄ってはその日あった出来事を話し、彼女の横で夜食を食べるのが日課であった。 窓の外を見て変わらない景色を眺めながらどんな小さな変化でも大袈裟に彼女に話して笑っていた。 医者が言うには彼女は植物状態でいつ意識が戻るかもわからない、恐らくこちらの声も届いていないだろうとの事だった。 それでも俺は病院に通い続けた。 しかし疲れも溜まっていたのだろう、ある日俺は病院に行く事をやめた。 気持ちは病院に行きたかったが何かが足を止めた。 久しぶりに真っ直ぐ家に帰った俺は電気も点けずにベッドに倒れ込むと、泣いた。 涙が止まらなかった。 声を出して泣いた。 記憶の中の彼女はいつも微笑っていた。 ただその口元だけが印象的で、顔は思い出せなかった。 彼女の口が動く、何か喋っているようだがわからない。 一言呟くとまた記憶の中の写真に戻り、彼女は微笑んだ。
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