現実

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季節が何度か変わった後医者から彼女の体の変化を告げられた。 彼女は脳を損傷したその結果としてある特殊な状態にあるという。 彼女の体は常人よりも遥かに老化が遅いというのだ。 今はまだいいが後々面倒を見られる人がいなくなる、未来の医療の為に協力をしてくれないか、と告げられた。 勿論時間はあるのでゆっくり考えて下さいとの事だった。 協力とは、いずれは彼女の死という形になるのだろう。 俺は医者の元を去ると敷地内のベンチに腰掛け紅葉が綺麗な木を眺めた。 どれくらいそうしていただろうか。 彼女の未来・俺の未来。 この先交わる事は無いのだろうか。 ただ漠然とわかっている事が一つだけある。 彼女がいない未来なんて想像出来ない。 時間は貰ったが、次の日俺は医者に告げた。 今の状態で出来る研究には協力するが彼女の未来を奪う事は出来ないという事を。 医者は、そうですか、残念です。 とだけ言った。 だが、彼は去り際に一言 医者としては残念ですが、僕個人としては貴方の意見に賛成します。 幸せかどうかの価値観は人それぞれにある。 幸せでなければいけない理由もない。 いいじゃないですか、いっぱい泣いたって。 それで彼女が微笑ってくれるなら貴方の人生には意味がある。 俺は自然と頭を下げていた。 この時の医者の言葉は、その後の人生において随分と俺を救ってくれた。
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