濁った空模様

3/9
前へ
/13ページ
次へ
――――2008年 冬――― 北海道という広大な土地の端っこのほうに海斗と海斗の家族の家はあった。 「おやじー、灯油なくなっけぇ 買ってくるわー」 灯油入れを持って海斗は自転車にまたがり漕ぎ出す。 曇りゆきは怪しいが近くのガソリンスタンドまでなら大丈夫だろうと見越した海斗はなにくわぬ顔でペダルに力を加える。 灯油入れを片手で持っているため自転車は片手漕ぎ、若干ふらつく。 「おーい海斗~、なにしてんだー?」 近くに住む同級生の信二(しんじ)が声をかける。 海斗は信二の元で自転車をとめて片足を地面につけた。 「なあ信二。あとで週末課題のノート教えてくれないか?」 「俺の話はまるっきり無視かいな。 あ、課題?お前まだやっとらんのか。 しゃあない、100円でみせたるわ」 「ばーか、だれがだすかい。 今から灯油買いに行くとこだから後でお前ん家よるわ」 「はいはい」 そんなたわいのない会話をすると、海斗はまたガソリンスタンドへ漕ぎ出した。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加