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ある時、村人の一人が、
「一度でいいからこの紅葉が紅く染まるのを見てみたい」
と、言いました。
村人はこの意見に賛成し、どうやったら紅くなるのかと相談して、思いついたものから試していきました。
最初に、樹木医がこの紅葉を訪れました。
紅くならないのは、なにか病気だからじゃないのか、と言う人が居たからです。
しかし、樹木医の診断ではこの紅葉は病気どころかまったくの健康でした。
少女はこの様子を、つまらなそうに眺めていました。
次にこの紅葉を訪れたのは、村唯一の神社の神主でした。
何か悪い物が憑いてるのでは、と言う人が居たからです。
しかし、御祓いをした次の秋も紅葉は蒼いままでした。
憑いていることには憑いていても、少女は悪い物ではないのですから。
祓われることもなく、少女は意味の無い神事をする神主をつまらなそうに眺めていました。
次に紅葉を訪れたのは、村に荷物を運ぶトラックの、定年間近の運転手でした。
もう村人は、諦めかけていたのです。
そして村人の予想通り、トラックの運転手になにが出来る訳でもなく、彼は根元に腰掛け、時間を潰してなんとかしようとはした、という逃げ道を作って帰っていきました。
その様子を、少女はとても残念そうに眺めていました。
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