出会い

11/20
前へ
/23ページ
次へ
「どう?落ち着いてきた?」 その青年は心配そうに、私の額に手をあてた。 ひんやりと冷たい彼の手。 心臓の音が早くなっているのがわかる。 「熱はないね」 一安心したのか、彼はベッドの端に腰をおろした。 そして、サッと不安が脳裏をよぎった。 彼は何者? 敵国の人間なのに、なぜ私を心配しているの? なぜ私を殺さないの? 殺すことに快楽を得ているんじゃないの? もしかして、油断させて 私を抱きたいのかもしれない。 そうだ、きっとそうだ。 優しい顔して、欲求には勝てないんだ。 きっと… 「何考えてるの」 優しい声。 久しぶりの人間の声。 目が合うと、彼は長くてきれいなその指を 私の髪に絡ませた。 「やめてっ」 バシっとその手を振り払い、 上半身をおこした。 「私を抱きたいなら、早く抱けばいいじゃない! 偽りの優しさなんていらない!!」 温かい人間に会えたのは嬉しい。 だけど、 信じれば信じるほど裏切られたときの悲しみは 計り知れない。 彼がどのような反応をするのか確かめるため 顔をあげると…
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加