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「どう?落ち着いてきた?」
その青年は心配そうに、私の額に手をあてた。
ひんやりと冷たい彼の手。
心臓の音が早くなっているのがわかる。
「熱はないね」
一安心したのか、彼はベッドの端に腰をおろした。
そして、サッと不安が脳裏をよぎった。
彼は何者?
敵国の人間なのに、なぜ私を心配しているの?
なぜ私を殺さないの?
殺すことに快楽を得ているんじゃないの?
もしかして、油断させて
私を抱きたいのかもしれない。
そうだ、きっとそうだ。
優しい顔して、欲求には勝てないんだ。
きっと…
「何考えてるの」
優しい声。
久しぶりの人間の声。
目が合うと、彼は長くてきれいなその指を
私の髪に絡ませた。
「やめてっ」
バシっとその手を振り払い、
上半身をおこした。
「私を抱きたいなら、早く抱けばいいじゃない!
偽りの優しさなんていらない!!」
温かい人間に会えたのは嬉しい。
だけど、
信じれば信じるほど裏切られたときの悲しみは
計り知れない。
彼がどのような反応をするのか確かめるため
顔をあげると…
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