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人間の子供を模った動物の化け物が、自分を獲物と認識して近寄ってくる。 その姿はまさに獣だ。 一見小さな男の子だというのに、まるでトラやライオン、いやハイエナに睨まれているかのような感覚だった。 いつの間にか全身が汗でぐっしょりだ。 蛇に睨まれたカエル。 そんな言葉がぴったりだと感じた。 逃げようにも腰が抜けて足に力が入らない。 「く、来るなっ」 男は後ずさりながら、からからに渇いた喉から声を絞り出した。 しかし、その言葉は相手の耳には届いていないらしい。 目の前に獲物がいる。 それを本能的に察知した化け物が不適に笑う。 まるで口裂け女のように、その子の口角が耳元までつり上がる様を男は見た。 その直後、男の恐怖した悲鳴と、後を追うように馬の嘶きが熱帯草原に響き渡った。
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