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ガラガラと音を立てながら、一台の馬車がサバンナの道なき道を走行する。 辺りは一面土気色をした大地が広がり、ときおり生息する植物が点々と散らばっていた。 見渡す限り何もない一帯、人の姿も往来する馬車もどこにも見当たらない地帯を、馬車は砂埃を派手に巻き上げながら走っていた。 秋も半ばに差し掛かった頃なのに、この地帯はまだ夏を思わせるくらいに空気が乾いて太陽が猛威をふるっている。 馬車の幌がなければ、たちまち脱水症状を起こしてしまいそうだ。 馬車の手綱を握った男は、傍に置いた水筒から水分を体に補うと、額に浮き出た汗を乱暴に拭った。 そしてポケットに仕舞っていた懐中時計を取り出して時間を確認すると、次に地図とコンパスを取り出した。 揺れる馬車の上で、片手で手綱を握りながら器用に地図を広げる。 もうそろそろ到着してもいい頃なのだが…。 そう思って前方に目線を戻した。 真っ青に晴れ渡った空の下、はるか遠くの地平線辺りに、蜃気楼のように浮かび上がった都市がぼんやりと確認できる。 その都市は埃のせいか、地から発する熱気のせいか、少し霞んで見えた。 だが、男は都市よりも他のものに目を奪われていた。 なんだ、あれは…。
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