5人が本棚に入れています
本棚に追加
行く手を阻むように佇む影が一つ…。
一瞬モンスターだろうかと身構えたが、近づくに連れてそれが人だということに気がついた。
こんな場所に、珍しいな…。
訝しく思いながら更に近くなってくると、また男は意外なことに気づくことになる。
その人影はどう見ても子供の姿だったのだ。
子供は一人、こちらに背を向けてしゃがみ込んでいる。
砂除けのローブを纏い、まるで地面にお絵描きでもするかのような格好で佇んでいた。
男はその子の手前で馬車を止めると、地面に降り立ってその子に近づいた。
そんな場所で子供が何をしているのだろう?
見る限り他に人影はない。
不審に思ったが、放っておくわけにはいかなかった。
ここはいつモンスターが現れてもおかしくないのだから。
「こんなところで何をしているんだい?」
男はその子の背後から膝を曲げて屈むと声を掛けた。
だが、その子は振り向きもしない。
こちらが話し掛けているのに、それすらも分かっていないのだろうか。
男は眉間にシワを寄せて、更に子供を上から覗き込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!