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行く手を阻むように佇む影が一つ…。 一瞬モンスターだろうかと身構えたが、近づくに連れてそれが人だということに気がついた。 こんな場所に、珍しいな…。 訝しく思いながら更に近くなってくると、また男は意外なことに気づくことになる。 その人影はどう見ても子供の姿だったのだ。 子供は一人、こちらに背を向けてしゃがみ込んでいる。 砂除けのローブを纏い、まるで地面にお絵描きでもするかのような格好で佇んでいた。 男はその子の手前で馬車を止めると、地面に降り立ってその子に近づいた。 そんな場所で子供が何をしているのだろう? 見る限り他に人影はない。 不審に思ったが、放っておくわけにはいかなかった。 ここはいつモンスターが現れてもおかしくないのだから。 「こんなところで何をしているんだい?」 男はその子の背後から膝を曲げて屈むと声を掛けた。 だが、その子は振り向きもしない。 こちらが話し掛けているのに、それすらも分かっていないのだろうか。 男は眉間にシワを寄せて、更に子供を上から覗き込んだ。
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