5人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、何か嫌な予感が男の中を駆け巡った。
ローブの隙間から見え隠れしていたその子の手。
つるんとした人間の肌ではなく、もさもさの体毛が手の甲を覆っている。
人間の細長い指は見当たらず、まるでジャンケンのグーを握ったような。
そう、例えて言うなら動物のトラやライオンのような、そんな形をしていたのを確かに確認した。
モ、モンスターか…。
真夏のように暑いというのに、男は背筋を走るゾクリとした悪寒を感じた。
一瞬にして周りの温度が何度か下がったような感覚。
男は足音を忍ばせて一歩下がった。
だが、ローブを纏った子供のようなモンスターとは初めて聞く。
トラやライオンに類似するモンスターなら、こんな体勢で屈んだりはしないはずなのに。
という疑問が頭の中を掠めたとき、目の前のローブがこちらを振り向くようにして動いた。
そして、その子の傍にあったものを目にして、男は恐怖のあまり凍りついた。
最初のコメントを投稿しよう!