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その時、何か嫌な予感が男の中を駆け巡った。 ローブの隙間から見え隠れしていたその子の手。 つるんとした人間の肌ではなく、もさもさの体毛が手の甲を覆っている。 人間の細長い指は見当たらず、まるでジャンケンのグーを握ったような。 そう、例えて言うなら動物のトラやライオンのような、そんな形をしていたのを確かに確認した。 モ、モンスターか…。 真夏のように暑いというのに、男は背筋を走るゾクリとした悪寒を感じた。 一瞬にして周りの温度が何度か下がったような感覚。 男は足音を忍ばせて一歩下がった。 だが、ローブを纏った子供のようなモンスターとは初めて聞く。 トラやライオンに類似するモンスターなら、こんな体勢で屈んだりはしないはずなのに。 という疑問が頭の中を掠めたとき、目の前のローブがこちらを振り向くようにして動いた。 そして、その子の傍にあったものを目にして、男は恐怖のあまり凍りついた。
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