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「あら、【藍(ラン)】じゃない。貴女、いたのなら手伝ってくれて良かったんじゃないの?」
紫は嫌味を含んだ笑みで藍を見る。すると、藍と呼ばれた女性は頬を人差し指でかき始め、口を開いた。
「そうしたいのは山々だったんですが、あんな人と闘いたくなかったもので。命がいくつあってもたりませんよ」
「ふふっ。それもそうね、私もあんな規格外と闘いたくないわ。生きられる自信がないもの」
体を起こし、ドレスに付いた埃を手で軽く払う。
「それより藍。貴女は義偽を連れていった時、私の側にいた? それとも離れてた?」
「後者です。紫様が何を考えているかわかりませんが、あの時私は近くにいませんでした」
「…………そう。ならいいわ」
言葉では納得しているが、考えはそうはいかないようだ。その証拠に紫の表情晴れない。
「空耳とはおもうんだけどね、正悪……なんとか。まぁ、そう聞こえたのよ」
「何ですか、それは」
「実はね、あの義偽だけじゃなく、【九郎 (クロウ)】って人間もいるらしいの。二人は一人。一人は二人。私にはよく分からないから、【貴方達】って表現したけど……」
スッと血で濡れている右手で空を切る。
「それより、 早く幻想郷に戻りましょう。今幻想郷は不安定な状況だから、義偽が何処に落ちるか分からないわ。【やつ】の手に渡る前に……!!」
こうしてこの日、幻想郷に二人が招待された。
これが幻想郷の運命を大きく変え、二人の運命も変えることになるのは、この時誰も分からなかった。
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