正義

4/4

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「あら、【藍(ラン)】じゃない。貴女、いたのなら手伝ってくれて良かったんじゃないの?」 紫は嫌味を含んだ笑みで藍を見る。すると、藍と呼ばれた女性は頬を人差し指でかき始め、口を開いた。 「そうしたいのは山々だったんですが、あんな人と闘いたくなかったもので。命がいくつあってもたりませんよ」 「ふふっ。それもそうね、私もあんな規格外と闘いたくないわ。生きられる自信がないもの」 体を起こし、ドレスに付いた埃を手で軽く払う。 「それより藍。貴女は義偽を連れていった時、私の側にいた? それとも離れてた?」 「後者です。紫様が何を考えているかわかりませんが、あの時私は近くにいませんでした」 「…………そう。ならいいわ」 言葉では納得しているが、考えはそうはいかないようだ。その証拠に紫の表情晴れない。 「空耳とはおもうんだけどね、正悪……なんとか。まぁ、そう聞こえたのよ」 「何ですか、それは」 「実はね、あの義偽だけじゃなく、【九郎 (クロウ)】って人間もいるらしいの。二人は一人。一人は二人。私にはよく分からないから、【貴方達】って表現したけど……」 スッと血で濡れている右手で空を切る。 「それより、 早く幻想郷に戻りましょう。今幻想郷は不安定な状況だから、義偽が何処に落ちるか分からないわ。【やつ】の手に渡る前に……!!」 こうしてこの日、幻想郷に二人が招待された。 これが幻想郷の運命を大きく変え、二人の運命も変えることになるのは、この時誰も分からなかった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加