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始まりとは突然にやってくるものだ。
始まりは突然にやってくる。突然やってきたかと思うと、それは嵐のように全てを破壊して彼方へと消えてしまう。もしくは、降り注ぐ太陽の光のように、健やかに何かを与えてくれる。どんなにそれを警戒しようと、どんなにそれを避けようとしても、やはり始まりは突然やってきてしまうのだ。
諸君にはないだろうか。そんな始まりが。
なんでもいい。良いことでも、悪いことでも。幸運なこと。不幸なこと。愛しの想い人にいきなり告白された。いつもやっていることで失敗し、取り返しのつかないことになっ た。
なんでもいい。何かしらはあるだろう。何かしらはあって、覚えていないこともあるだろう。
始まっていることさえ気づいていない者も、いるぐらいだ。そんな状況はいつも何か不自然で、仕組まれたかのように必然的だ。
理不尽とも言える。
もしも運命というものがあるとして、それが意思を持つ神のような存在であるなら、なんと理不尽なことだろうか。あるものには幸福で平穏な運命を与え 、あるものには不幸で 波乱な運命を与える。
これを理不尽と言わずしてなんと言うのか。
そう、運命とは。人生とは理不尽に理不尽を重ねた物なのだ。平等ではない、この不自然な始まりが人生だ。平等ではない、この必然的な始まりが運命だ。
彼等の場合はその状況が異質で、その登場人物が異常だった 、というだけの話であり、それまでだ。
これはすがる者の物語だ。
突然の始まりに翻弄される矛盾した存在のお話。
二人の舞台は。二人が妖怪の賢者によって送られた世界は。妖怪の賢者が楽園と呼んだその世界の名は。――幻想郷。
そこはまさしく、忘れられたものの――楽園だった。
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