【レイティと青い鳥】

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「ある日、レイティはお遣いの帰りに、いつも気になっていた深い森の中へと入っていってしまいました」  日に照らされ、色に淡さの残る木々の鮮やかは、いつしか暗く、深々と塗られた緑と共に鬱蒼へと変わっていく。それでも誘われるように歩き進む子供は、無邪気に、そして軽快に。抱えた袋の中で、面長のパンが弾む。 「そこへ入ってはいけないと、レイティはいつも母様から言われていたのですが――」  笑みを浮かべ続けたままの人形は、暗がりへと立ち入った後に、ようやく、ただ一度だけ後ろを振り返った。 「それでも――」 そのまま、また、森の奥へ。 「レイティは、この間見かけた大きな青い鳥がここへ出入りしているのを見てからというもの――」  その森には恐ろしい大男がいて、森に迷い込んだ者で、口に入るものならば何でも食べてしまうのだとか。 「――そのことを青い鳥に教えてやらなければならないと、ずっと思っていたのです」  場面が変わって、枝や葉の尖った森は黒々と、おどろおどろしくも塗られている。息を呑んだのは、小さな子供たち。すると、今度は大きな木造りの家が現れた。作り込みの細やかさが、子供たちに現実味を植え付ける。 「レイティはその中から、か細く鳴く鳥の声を聞きました」  家の扉に近づいていくお遣いの少年。薄い扉がぱくぱくと、薄く口を開け閉めしているように動いている。扉に比して大きな指が、そこからはちらちらと覗いていた。それを見ていた少女は目を手で覆い、また別の少年は、青い鳥を助けるんだと意気込んでいた。 「鬼が出てくるか――レイティがそっと扉の隙間から中を覗き込むと、そこにはなんと、あの青い鳥を両手で握りつぶそうとする、髭面の大男がいたのです」
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