【レイティと青い鳥】

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   青い鳥も、少年の言葉が分かるかのように後を追う。苦しむ大男を囲うようにして、再び家の外装が大きな手でもって被せられた。 「レイティと青い鳥は、一緒になって黒い森へと飛び込みました」  家が徐々に遠ざかり、また黒々とした森が現れる。家を、大男を、彼らから遮って――けれども、確かに家の影から聞こえるのは、大男の恨み声。 『待ぁてぇ、どこへ行ったぁぁ!』 「大きな大きな怒鳴り声は、森の奥へ逃げ込んだレイティたちにも聞こえてきました。大男が走ったのでは、小さなレイティたちはすぐに追いつかれてしまいます」 遅々として進まないレイティへ、ぐんぐんと大男は距離を縮めてくる。これにはさすがの男の子たちも「あぁ、来ないで……!」と恐ろしさを隠せないようで。 『がぁぁ、見つけたぞ、食い殺してやる!』 それに追い討ちをかけるように、遠くから大男が諸手を挙げて咆え上げる。足を止めて縮み上がるレイティと、そしてそれに同調した男の子たち。小さき者では、巨悪には勝てないのか。ぐっ、と息を呑む――そんなひと呼吸。 『――レイティ、私と一緒に、戦いましょう』  緊迫と、漂う絶望を解きほぐしたのは、胸に染み入るように美しい、歌声にも似た声だった。  え? となったのはレイティ――と男の子たち。 『鳥さん、お話できるの? それに、どうして僕の名前を?』  女の子たちもが、綺麗な声に誘われるように耳を傾け始める。 『私は、ただの鳥ではないのです。それよりも、とにかくレイティ、これを――』  押し黙る子供たちとレイティに差し出されたのは、子供の手にぴったりと合う、小さな弓だった。空から、誰の手も借りずに降りてきたその神秘に、子供たちが感嘆の声を吐き出してしまう。 『さぁ、これを! 先ほどしたように、大男の口へと打ち込むのです!』
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