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今はもう、レイティは恐怖でいっぱいの顔をしていて。
『えぇ! もうあんなに怖いのは、イヤだよ!』
『大丈夫、勇気を出して。私もあなたと戦います』
青い鳥は言葉を終えると、不思議な光と共に一本の矢へと変わっていた。まるで手品でも見ているようで、瞬く間に吹き出した煙から現れた青い矢に、レイティは戸惑った。それはまた、子供たちも同じ。
『いけますか、レイティ? 私も、頑張ります』
不思議と恐怖とに呑まれるようだったレイティと子供たち。けれどその声で、彼らは気がついた。あの矢こそが、あの青い鳥そのものなのだと。
『鳥さん、鳥さんなんだね!? 分かった――分かったよ。僕も一緒に戦うよ!』
大きく頷くレイティ――いや、子供たち。
「レイティは、大人たちが野犬を追い払うのによく使っていたために、弓の引き方なら知っていました」
ぐっと歯を食いしばった子供たち。それに合わせて、レイティが弓を引き絞る。
『がぁぁ、そこを動くなよ! 今、捕まえてやるからなぁ!』
突進するような勢いで、大男が手を前へと突き出してレイティへと急迫する。家の中にいた時と違うのは、その速さ。口を寄せてきただけだった先ほどとは、比べ物にならないほどの圧迫感が彼らを襲う。大男の姿が、心なしか大きくも見える。
『怖い、怖い。でも、逃げちゃダメだ!』
『そうです、レイティ、いきますよ!』
引き付ける――男の子が前へのめり込む。
引き付ける――女の子が手を合わせて祈っていた。
引き付ける――大男が大口を開けながらレイティへと手を伸ばした。
瞬間、聞こえたのは布を引き裂いたかのような鋭い音。子どもたちは見開いた目で確かに見ていた。レイティの弓から、青い矢が嘶くように射出されたのを。青い閃光が、木々をすら突き抜けて飛んでいった。
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