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『ぐ、わぁぁぁぁ!』
レイティは体を避けきれずに、自身の四半ほどもありそうな大男の手に伸し掛られていた。「きゃぁぁ」と悲鳴をあげた女の子。男の子達は呆然としたように声を失っていた。
『レイティ、レイティ!? 無事ですか、レイティ!』
歌うようだった声は、悲劇を思わされるほどに、喉を締められたような甲高いものへと変わっている。周囲がざわりとした。大事な壺を割ってしまった時よりも、大切だった飼い猫が動かなくなった時と同じくらいに。心が、ざわりとするのを思い出す。
動かなくなった大男。けれど、動かないのだ――レイティもが。絶句していた男の子たちの顔が、とうとう悲愴へと歪もうとしていた。
泣くのかい――――?
『レイティ!』
つんざくようだった声は、けれど喜びのそれ。わあっと上がった感嘆の声と共に、子供たちは互いの顔を見合っては笑っていた。泣き色を交えた青い鳥は、のそりと大きな指の隙間から起き上がったレイティに寄り添った。
『ああ、レイティ、あなたが無事で良かった! あなたの勇気を、私は一生忘れません。助けてくれて、ありがとう』
大きな青い鳥を肩に止めたレイティは、淡い、大空と同じ色をしたその羽を撫でた。
『鳥さんが一緒だって分かったら、僕だけ逃げちゃいけないって、思ったんだ』
青い鳥はつぶらな瞳を伏せることで、感慨深げに頷いていた。そして、子供たちがざわめく一言を、目の前の少年へと投げかけた。
『レイティ、私を助けてくれたお礼に、何でも一つだけ、あなたの願いを叶えてあげましょう』
なんでも、一つだけ?
レイティが望むのは、大男でも倒せそうな剣だろうか? たくさんのお金だろうか?
僕だったら? 私だったら?
『本当? だったら――――』
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