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人生五十年
下天のうちに比ぶれば
夢幻のごとくなり
ひとたびこの世に生を受け
滅せぬもののあるべきか
燃え盛る寺の一室にて、敦盛を一差し舞う御仁がいた。
「まさか、あのキンカン頭が裏切るとは…
この世はほんとに思い通りにいかぬものよ。」
敦盛を待った御仁が独り言をしみじみといった。
この御仁、戦国時代に名を馳せた織田信長である。
今まさに織田信長が自決しようとする場面であった。
「そちを巻き込んでしまって悪かった。すまぬがそちもあの世までお供してもらう事になるわ。」
織田信長が同じ部屋にいた男に話し掛けた。
「まぁ、いいよ…ノブッチはあの世に逝ったら何をするんだい?」
話し掛けられた男は特に慌てることもなく信長に問いただした。
「第六天魔王と呼ばれておるからな。冥土の閻魔大王を打ち倒して瞑府の王なるかな」
これから死のうとしている人間とは思えないような輝いた目をしていた。
「それはいいね。んじゃ、冥土の閻魔大王退治といきますか」
そういうと男は側に置いていた自前の荷物をあさりはじめた…。
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