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笹田「友紀さん、一緒に帰らない?」
HRが終わるなり、学級委員長の笹田純が話しかけてきた。
友紀「えーっと、笹田さん…だよね?うんいいよ。」
何が笹田さんだよね?だ。自分で言っときながら白々しい。
笹田「じゃあ下駄箱まで一緒に行きましょ。」
手にしていた鞄を私に見せながら笹田さんは言った。
西村「ハイハイ!俺達も一緒に帰りたいでーす!」
2人で後ろのドアから出ようとした時、誰かに呼び止められた。
振り向くと、さっき夏目君と話していた…確か西村だったか。少し馬鹿っぽい少年が立っていた。
横には夏目君も居た。
笹田「えー、せっかく女子2人で帰ろうと思っていたのに…。良い?友紀さん。」
友紀「私は別にかまわないよ。」
西村「うっし!俺、西村悟。よろしく、友紀!」
友紀…。
笹田「いきなり呼び捨てなの?ほら、友紀さんだって…固まっちゃったじゃない。」
友紀「ち、違うの。その…呼び捨てされたのってここ数年ほとんど無かったから嬉しくて…。」
ここ数年、と言うよりも記憶の中では初めての事だ。
西村「え、マジで!?家族とかは?呼び捨てじゃないのか?」
友紀「あ……家族は私が小さい頃飛行機事故で死んじゃって。今は親戚の家にお世話になってるの。」
言いづらい、というよりも場の雰囲気を暗くしてしまうんじゃないかと声のボリュームを下げて話す。
西村「そうだったんだ…その、ゴメン。言いづらいだろうに。」
友紀「ううん、気にしないで。私こそなんかゴメン。」
笹田「でも友紀さんもなんだ…。」
友紀さんも?
友紀「もってどういう意味?」
夏目「俺も小さいころに両親が他界していて今は遠縁の家に居候してるんだよ。」
夏目君も…なんだろう、この違和感を覚えるほどの2人の合致感。
笹田「そういや、友紀さんって何処の家にお世話になってるの?」
友紀「えーっと、逢坂さんの家。直接的な血の繋がりはないんだけど色々とあって…。」
実は今お世話になっている逢坂家は古い俗にいう妖払いを家業として行っていた家だ。
今は妖力のある人が居ないため妖払いはやっていないが『見える人』に対しての理解はあるので見える私を引き取ってくれた優しい一家だ。
夏目「あれ?逢坂さんっていうと田んぼの方にあるちょっと大きな一家の事か?」
友紀「うん、そうだけど…。」
夏目「それならうちの近所だよ。逢坂さんにはいつもお世話になってる。」
なんと、本当に関わりの多い奴だった。
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