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「でも、もういいんです」
あたしが何を言っても、早川先輩と遥香先輩は黙ってる。
あたしの声だけが、虚しく雨の中に響いた。
「…じゃあ、あたし帰るので」
傘もないのに雨の中に飛びだせば、
「おい…っ!!!!」
早川先輩があたしの腕を慌てて掴んだ。
雨は冷たいのに、早川先輩の手はあったかくて。
「大丈夫ですよ、馬鹿だから、風邪なんて引きません」
「そうじゃなくて…!」
「大丈夫です」
きっぱりと言い切って、早川先輩の手をそっと引き離す。
「これからも、どうかお幸せにっ!」
無理やりな笑顔を作って、精一杯の明るい声で、そう言うのがやっとだった。
一瞬流れてしまいそうになった涙を必死にこらえて、あたしは雨の中を全力で走った。
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