先輩、笑ってください。

ほんとは、本当は。

「なんか今日の陸はやさしいなー」

ドアの外でつぶやきながら、靴を脱ぐ陽菜。

脱いだ靴を玄関に置いて、戻ってきた陽菜はあたしの手を引いて、

「ここ、で話そ」

目の前のドアを開けて、あたしを引っ張った。

中に入ると、そこは物がほとんどない静かな部屋。

…今は、こういうところが落ち着くかもしれない。

陽菜も、陸くんも、わかっててそうしてくれたのかな。

ふたりに、気を遣わせてしまった。

そんなことを思っていると、

「実咲子、」

陽菜が、口を開いた。