輝樹と由里

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「どうかしたの?」 由里を見て黙っていた輝樹に由里が言った。 「な、なんでもない!えーと・・・その本どうしたの?」 慌てながらも、今度はちゃんと小さめの声で言う輝樹。 「これね~、お母さんと一緒にお部屋掃除してたら見つけたの。 昔、お母さんが私たちくらいの頃読んでた本だって。 私も読みたいって言ったらくれたの。」 よほど嬉しいのか由里は満面の笑みである。 「じゃあ今日はその本を読むの?」 「うん!そうだよ!」 輝樹の問いに由里はまた、笑顔で答える。 「じゃあ向こうの木の影で読もうよ。暑いからさ」 輝樹は近くにあった木の方を指さしながら提案した。 「そうだね。先に着くのはわたしだ~!」 由里はそう言って駆け出す。 「ちょ、待ってよ由里~」 輝樹はそんな由里を追いかけていく。
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