-1日目-

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-1日目-  スーパーでのパートを終えて家に辿り着いてから、新島今日子は携帯に着信したその3通のメールを開いた。  何かのいたずらだろうと最初は思ったのだが、2通目に並ぶ名前に思わず眉をひそめる。  自分の本名と職業が、漢字さえも正確にそこに掲載されている。  何処から個人情報が漏れているのだろう、と訝りながらスクロールして、最後の名前にまた戦慄した。  瀬川香。それは少しばかり年の離れた今日子の妹の名前だったのだ。  不気味だった。姉妹の名前がセットで漏れている。2人ともの現在の職業を正確に知っていて、しかも片方は結婚で改姓していることまで知っているなんて。何処の悪徳業者だろう。それに、 3通目──「ゲーム開始までに身辺整理」とは? 強制的に引越でもさせられるのか?  携帯を操作して削除しようとしたが、「身辺整理」の文字が彼女をためらわせた。もし、自分の身に何かが起こった時、このメールが何かしらの証拠になるのではないか。そんな小さな予感がした。  保険のためにメールに保護をかける。同じ画面のデジタル時計を見る。香は授業中だろうか。戸惑いつつも電話をかけてみることにした。
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