魔王さま、お出かけをする!

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「ハル」 「っ」 私が聞いた事のない、マモルの低い声。 ビクッとなった。 怖い……。 「人間達から食料を奪うっていうのは、ハルがやるように言ったのか?」 「い、いや……初代魔王が決めたらしくて、私じゃない……」 今の魔界は、全て初代魔王……私の死んだ祖父が作り上げた。 祖父はなぜか人間を恨んでいるらしく、恨みから決めた事らしい。 「そっか……ハルが原因じゃないっていうのを聞いてひとまず安心した。いくらハルでも許す事ができないから」 こ、怖い……。 「じゃあハル、ハルは魔界に帰ったらどうするの?」 「魔界に帰ったら?」 「そう。同じように食料を奪い続ける?それとももう攻められないように人間を倒す?」 「…………」 食料を奪い続けても同じ事の繰り返しだし、人間を倒したら食料を失って私達魔族まで滅びる……。 どっちも選べない。 考えてみれば、私は特に人間に恨みなんてないのに、どうして死んだ祖父が恨みで決めた事にいつまでも従わないといけないんだ? せっかく魔王になったのに、何もしていない。
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