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 目を覚ますとすっかり夜が明け、口から出た筈の蛆も身体中を駆け回る蟻も、嘔吐物すら全て消えていた。    いつもこうだ。朝には何事も無かったかの様に治まっている。    食欲の無いまま居間に向かうと、母が朝食を食べながらテレビを観ている。   「おはよう。今日の夜中、殺人事件が起きたらしいわよ。しかも家の近所で」   「近所で?」    僕はゆうべの記憶が無い。気絶していたからだ。僕は満月の夜に変身するという狼男を想像し、自分と照らし合わせていた。   「母さん、僕が狼男に変身して、その人を殺したのかもしれないよ」    一応真剣に言ってみたものの、当然母には相手にされなかった。
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