青田主任×岬さん

11/22
281人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
「…今日は本当にすみませんでした。私、帰ります。」 主任を愛おしいと思うと同時に湧き上がるのは、この感情を抑えなければいけないという想い。 さっきは酔っていて自分の感情にまかせてあんな事を言ってしまったけど、主任には決まった相手がいる…、その事実が酔いの覚めた頭では嫌なほど理解できたから…。 これ以上、手を伸ばせば触れられる距離にいたら…自分の気持ちを隠し通せる自信が私にはない。 主任を困らせるわけにはいかない…。 溢れでそうになる想いと涙に蓋をして、ベッドの下に置かれているバッグを手に取りそのまま胸の前でギュッと握り、主任の顔を見ないまま頭を下げる。 主任の顔を見たら決心が鈍りそうで、そのまま下を向いたまま部屋を出ようとした時――、 パシッ。 主任が私の腕を掴む。 「岬さん、何か忘れてない?」 主任が優しく私に問いかけてくるが、その穏やかな口調とは裏腹に、眼鏡越しに私を見つめる瞳にいつものような温かさはなかった。 「主任、何を言って…、」 そこまで言うと、主任が私の腕を掴む手に一層力がこもった気がして、その先の言葉を出すことができなくなってしまう。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!