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「俺、まだ慰めてあげてないよ?」
主任の口から“俺”なんて今まで聞いたこと無い…。
「あ、いや…、あれは酔ってただけなんで、…忘れてください。」
いつも丁寧な主任の口調が変わったことに戸惑いを感じながらも答える。
「……帰って、彼氏と仲直りするの?」
主任が私の腕を掴む力をゆっくりと緩めていく。
…次の一言で、全てが終わる。
私の中での予感が、現実に変わる瞬間。
このまま、この手を握り返すことができたら…。
そう思いながらも、今できる精一杯の笑顔を顔に貼り付けて答える。
「…はい。帰って彼氏と仲直りします。」
私がそう言うと、主任が私の腕から手をゆっくりと下に滑らせていく。
離さないでほしい…、そう言ってしまいそうになるのを必死で堪える。
こうして2人っきりになることも、特別な会話をすることがなくても、もう少し…、私の勝手なこの想いが消えてなくなる日まで主任を好きでいさせてください。
そう心の中で懇願し、主任の手が私の指先まで降りていくのを、ただ…、ただ見つめていた。
…離れてしまう。
そう思った瞬間、
主任が私の指に自分の指をスッと絡めた。
「…嘘つき。」
そう一言静かに主任が呟いた。
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