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「たまたま岬さんに残業と休日出勤を続けて頼んだ時に違和感を覚えたんだ。」
…違和感?
「岬さんいつも二つ返事で急な残業を引き受けてくれるでしょ?」
こくん、と頷きながらも、それが何で彼氏がいないって事に繋がるのか私にはわからなかった。
「岬さんは真面目だし、残業を嫌がらず引き受けてくれるのはわかるけど、急に頼んだにしては携帯や時間を気にする様子もなくて、それ見てあれ?って思って。」
そこまで言われても、まだピンとは来なくて主任の次の言葉を待つ。
「彼氏がいれば休日や仕事終わりのデートだってないわけないのに、休日出勤や週末の残業も嫌な顔せず引き受けてくれるし、遅くなっても時間を気にしないなんて彼氏がいるにしては不自然だと思わない?」
…そんなとこまで、考えてなかった。
「確信持てるまで、だいぶ残業頼んじゃったけどね。
これ、上司の特権。」
ははと笑いながら言う主任の表情は、いつもよりずっと幼く見えた。
「…主任がそんな事するなんて、なんか意外です。」
つい、思っていた事が口から出てしまう。
「あ…、がっかりした?」
主任が苦笑いしながら、ちょっと困ったように聞いてくる。
「ぜ、全然っ、そんな事ないですっ。主任にがっかりなんかしないですっ。絶対!!」
至近距離にいるにも関わらず、私は大声をあげて否定した。
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