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これは…、夢?
「好きだよ。」
唇からぬくもりが遠のくと同時に、耳に響いた言葉。
…また、夢をみているのかな?
しかも、自分にとってこんな都合のいい夢を…。
距離が近すぎて、ぼんやりとしか見えなかった主任の顔が離れていき、その表情が鮮明になっていく。
私を見つめる瞳は優しく、愛に溢れていた。
…そして、その瞳の中には私が映っている。
「…こんな、都合のいい夢みたら、わたし…、覚めたくなくたい。
ずっとこのまま、夢の中にいたい…。」
心の中で思っていたことが、無意識に震える声にのって言葉になる。
「…なら、これが覚めない夢だって岬さんがわかるまで、何度でも教えてあげる。」
そう言って主任が急に立ち上がり、私の腕をとる。
次の瞬間、さっきまで自分が寝ていた温もりの残るベッドの上にいた。
さっきと違うのは、見慣れない天井は視界には映らず、代わりに私を優しく見下ろす主任がそこにはいた。
「…もう1人で、待たなくていいの?」
朝にあなたを待つ切なさを思い返す。
「これからは、何度でも2人で朝を迎よう。」
あぁ、夢じゃないんだ…。
これはもう、夢なんかじゃない…。
言葉の代わりに、幸せの涙が次から次へと溢れでてくる私に、主任は甘い甘いキスを落としていく。
「夢じゃないって思えた?」
うん、うんと首を何度も縦に振る。
「んじゃ、岬さんはもう俺の彼女ね。」
そう言って、主任は私の髪を撫でながら満足そうに微笑んだ。
彼女と言われたことが嬉しくて、泣きながら私も微笑み返す。
「…セクハラで訴えられる心配もなくなったし、これで思う存分大好きな岬さんに触れられるね。今夜は眠らないまま朝を迎えそうだ。」
そう私の耳元で囁いた主任は、今まで見たことないぐらいのいたずらっぽい幼い笑顔を私に向ける。
そして、顔真っ赤にした岬さんを見て、主任さんは幸せそうに微笑みました。
ーEnd
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