青田主任×岬さん

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――あの日から3ヶ月が過ぎ、季節は秋に移り変わっていた。 「岬さん、急で悪いんだけど今日残業頼まれてくれない?この資料明日までまとめてほしいんだ。」 申し訳なさそうな顔をする主任に、笑顔でわかりましたと返事をし資料を受け取る。 私と主任は当たり前…ながら、以前と何も変わらないただの上司と部下という関係が続いていた。 あの日のように2人が必要以上に接近することはなく、唯一変化があったことといえば…今みたいに主任から名指しで急な仕事を頼まれることが増えたことぐらい。 それと…、 あの日芽生えた胸の中の小さな気持ちは、こんな風に仕事を頼まれることにすら喜びを感じてしまうほどに大きくなっていて、もう気づかない振りなんかできなくなっていた。 笑った時に目尻にできるシワとか、集中して考えごとをする時に腕を組む癖を、愛しいと思えるほど深みにはまっていた。 残業中に時々黒縁メガネをかける主任の姿を見る度に、似合いすぎてつい見とれて気付けば頬が緩んでしまう。 思い出しただけでも、顔に熱が集まっていく。 プライベートな会話がなくても、こうして主任と同じ空間にいられるだけで今の私は満たされていた。 …いや、正確にはこれが限界だってわかっていたから。 だって…、あんな風にキスする寸前の距離まで近づいたのに、意識されている様子は全くないってことは…女として見てもらっていないってことでしょ? 主任の周りには、いつも綺麗で話題も豊富な女子社員がいるから地味な私が入り込む隙間すらないことはわかっていた。 海外で過ごした主任にとってはあの日のことはただのコミュニケーションの1つしかすぎなかったんだろう…。 決して誰にも明かすことのない想いを日々募らせ、誰もいないオフィスで夏の朝の風を感じでいた時間は、いつの間にか主任を待つ時間に変わっていた。
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