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―――、
「岬さんっ、飲んでるっ?」
「は、はい。いただいてます。」
精一杯の笑顔をつくり、声をかけてくれた男性社員に答える。
大掛かりなプロジェクトの成功をお祝いしての飲み会だから、出ないわけにも行かなかったから参加したけど…、やっぱりこの雰囲気には馴染めそうにはないな。
ううん、気持ちが憂鬱なのは、それだけが理由じゃない…。
主任とその隣で微笑み合う同じ課の女性達を見るだけで、胸にズキッと痛みが走る。
きっといつもならここまで心が乱れたりなんかしないのに、体に行き渡ったお酒と昼休みに偶然聞いてしまった主任の一言が頭から離れないせいかもしれない…。
部長に用があって探していた昼休みの始まり、喫煙室に入って行くのが見えたから出てくるまで待とうって思ってその前に立っていたら中から主任の声が聞こえてきた。
中に主任がいるんだと思って嬉しくなってしまったけど、2人の会話を立ち聞きするのも気がひけて出直してこようとした時…部長の口から思いがけない言葉を聞いてしまう。
「青木くん、先日話したお見合いの件なんだか…、もう1度考え直してもらえないか?」
…えっ?主任がお見合い?
その言葉に心臓がザワザワと騒ぎ出す。
「…その件に関してはお断りしたはずです。」
主任が断った事にホッとしたのもつかの間、次の2人の会話で一気に暗闇に突き落とされる。
「うーん、先鋒はやはり君を大変気に入っているようなんだが、そこまできっぱり断るからには誰かもう決めている人がいるのかい?」
「…はい。
私にはもう心に決めた女性がいます。」
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