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一体何分そうしていたのかわからないまま、体が鉛のように重くなり心には虚しさだけが無限に募っていく。
ダメだ…、いつまでもここにいたらどんどん惨めで辛い想いが大きくなるだけ…。
昼に具合が悪いことを同僚達にも伝えていたから、今ここで帰っても後で謝れば済むだろう…。
頬まで流れていた涙を拭って立ち上がると、無理矢理体に押し込んだアルコールのせいで足元がふらつき視界がぼやけていく。
「大丈夫っ?」
よろけた私の体を誰かに力強くグっと支えられる。
薄れゆく意識の中で見えたのは、今…私が欲しくて、欲しくて仕方のない人。
これは、夢…?
心配そうに私を見つめる主任の瞳の中には、自分の姿が映っているのが見える。
…触れたい。
…私この人に触れたい。
…夢なら許される?
「…あんな無理な飲み方して、岬さんらしくないね。
……、
…彼氏とケンカでもした?」
伸ばしかけた手が止まる。
…なんて、残酷な夢なの。
現実と何一つ変わらないなんて…。
夢の中でさえ、私はこの人に触れることは叶わないの?
自分がついた嘘が自分の首を締めることになるなんて、自業自得か…。
「そうだって言ったら、」
…最後に、夢でも構わないから、あなたに触れてもいいですか?
「…主任が慰めてくれますか?」
主任のスーツをキュッと掴む。
「…僕で、いいの?」
主任は顔色1つ変えることなく、真っ直ぐに私の瞳を見ながら答える。
…主任じゃなきゃ、いや、です。
…この言葉が声になったのかわからないまま、意識を深いところまで落としてしまう。
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