叶えるふたり

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比較対象ないから何とも言えないが、軽い。女の子ってこんなの軽いのか。あと、やわらかい。 これはもしやチャンスなのか?……なんて思っている場合ではない。 思いのほか、上にあげるのは苦労しなかった。おいおい、こんなにあっさり事が解決してもいいのかよ。いや、何事もなく終わって悪い事なんて一つもないが。とも感じたが、問題はこの後だった―――。    ―――なんて考えているそばで、スヤスヤと寝息を立てる猫耳コスプレイヤー。 家に連れ、改めて彼女の容態を確認したときは、正直これ以上ない安堵を覚えた。 あの後、彼女をどうやって家まで連れて行くかに大変悩んだ。そう、ただ気を失った少女なら何も問題はない……わけではないが、そこまで重要視するまでもない事だろう。しかし彼女は違う。白スクで猫耳で幼女なのだ。 考えてみてほしい。高校生の男が、白スクの幼女を抱く、もしくは背負いながら道を平然と歩いてるんだ。いくら児島が田舎だからって、いくら近くに海があったって、コスプレ幼女を抱えて歩く奴が居るだろうか。いや、いない。仮にそんな奴がいたとき、貴方ならどうする?俺だったら間違いなく警察を呼ぶ。 帰路の近くには警察署だってあるから、誰かに見つかれば即逮捕になる事間違いない。「おまわりさん!こいつです!」なんて馬鹿なギャグも言っている場合ではない。 極力誰にも見つからないようにしていたときは、いよいよ犯罪者の気持ちも分かった。何かの物音がするだけで、すぐに身構えてしまうし、何もない場所があれほど恐ろしいと感じたことは生まれてこの方一度もなかった。物陰というものがこれほどにありがたいものか、とさえ思った。もう端から見た姿を想像したくもない。それと、それでも勇敢に戦う犯罪者さん。あんたらすげぇよ。見習わないけどな。 しかしよくよく考えれば、彼女のしている耳のカチューシャと尻尾を外せば負担は軽減したんだ、という事に、今更ながら気づく。重要な策は後になってやってくるのだ。事件直後は視界が狭くなるとは言うが、まさかここまで気づかないとなると、あのときの俺は必死だったんだろうな、と思う。 「はぁ…この耳と尻尾のせいで俺はどんだけオドオドしたんだ……。」
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