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叶えるふたり
『はぁ…はぁっ…』
『っ!』
闇。果てしない漆黒の空間。ここがどこなのか、ううん、目の前に何があるのかも分からない。
『……っひ!?』
ただ、分かっていること。それは、わたしを追うモノの存在。彼らの放つ存在感だけは、この漆黒の中でも解かる。それらが目には見えない恐怖と、確実に迫ってきているという事実に、わたしは圧し潰されそうになる。
『ちょっとだけ、ほんのちょっとだけアレを見に行こうと思ってただけなのに、ほんのちょっとなのに…』
何かを考えていなければ、多分わたしは終わってしまう。諦めたら最後、還ることもアレを見ることも出来ない。後ろから、轟音が響く。近い。多分、もうわたしのすぐ後ろにいるんだ。
もう、ここで終わりなのかな。ここで、死んじゃうのかな。無意識に、負の方向へ傾く。考えちゃ駄目なのに、頭が言うことを全然きかない。おとうさんと、おかあさんと、おねえちゃんの言うことを聞かなかったから、きっと罰が当たったんだ。みんな、危ないからと止めてくれたのに、行ってしまったわたしが悪いんだ。
「…ごめんなさい」
不意に、こぼれる。誰に投げかけたのかも分からないそれは、この闇の中では何にもならない。むしろ、彼らにわたしを知られてしまうだけだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…っ!」
意味がないことは分かってる。でも、何かにすがりたいという気持ちが、勝手に言葉を放たせた。
彼らの存在感が近くなっているのがわかる。多分もうすぐ後ろ。さっきまでのとは比較にならないほど、近い。
持っていた微かな望みも、儚く散った。
「…いやだよぉ…死にたくないよぉ…」
「助けて…誰か…助けて…っ!」
届かないその言葉は闇に消え、流れたであろう涙も、この闇の中で輝くことはなかった。
「……誰か………」
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