無塵島殺人事件file2

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「酷い…。」 昨日同様。 焼け跡はそのまま残っている。 「ここ、昨日も調べたのよね? まだ何かあるの?」 口を抑えて後ずさる華夜の代わりに、由奈が遠慮がちに聞く。 「あの倉庫とかじゃないの?」 今度は絵里が倉庫を指差しながら言う。 「あそこはもう昨日調べたよ。 壁際にある20個の箱もね。 これは僕の勘だけど…。 昨日の謎の発火のからくりは他ならぬ現場にあると思うんだ。」 「それじゃあ…ここにマッチかライターが…?」 「それは分からない…。 でも考えても見てくれ。 容疑者である人間の手荷物からはそう言った物は出て来ていない。 なら考えられる理由は二つだ。 犯人が居るなら何処かに隠したか。 もしくは、藤堂さんの自殺でそのままか…。 どちらにしろこの場所なら焼け跡に紛れてそれを見付けるのは困難だ。 そう考えたら…」 「無駄だよ。」 突然後ろからした声に四人はびくつく。 「りゅっ…竜之介!」 「ったく…。 起きてみたら由奈も居ないし何してんのかと思ったら…。」 「それで無駄って言うのはどう言う事だい?」 「俺も昨日それを考えててさ、気が付いたら寝ちまったんだ。 その時に夢のお告げってやつを聞いたのさ。」 「はぁ…?あんたまさか夢で火を着けた道具はここじゃないとでも聞いた訳?」 「あほか。 思い出したんだよ。 昔読んだあの本をな。」 「本?」 「犯人がそれを使ったなら、間違いない。 犯人はアイツしか居ない。」 「それじゃあ!」 「まだだ。」 「え?」 「それはあくまでも出来たって事だけだ そんなもん何の証明にもならない。」 「犯人はどうやって火を?」 「つまり火を起こせるのは、ライターやマッチだけじゃないって事さ。」 「ライターやマッチだけじゃないって…。」 「とにかく…一旦戻ろうぜ。 他の皆もそろそろ起きただろう。」 「…。」
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