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「そう言えば、石沢さんは…?
まだあの人は見てないよ。」
絵里が思い出したように言う。
「行ってみよう。」
「確か石沢さんのテントは別荘があった所の近くだ…。
ならちょうどここの反対側だね。」
「あぁ。」
石沢のテントまで走り、開く。
「石沢さん!」
「ん…。
あまり大きな声を出さないでくれ…。
頭がガンガンする…。」
「睡眠薬の類の物を飲んだ時に出る症状ですね…。
何か心当たりは…?」
「寝る前に水を飲んだんだ…。
それからすぐに寝てしまって。」
「ならその水かな。」
「でもどうやって水に睡眠薬を…?」
由奈が後ろから問い掛けて来る。
「出来ない事も無い…。
前日の調査の時荷物は邪魔になるから全員一つの場所に纏めていた。
それに、全員が他の人間の行動なんて一々把握していない。
その時を狙えば、充分可能さ。」
「まぁ…な。」
「竜之介?」
「なぁ、哲也。
犯人が色部さんに箱を落としたのはいつだと思う?」
「僕らが箱を見たのは6時10分頃だ。
つまりその後か。」
「そうなるよな。
ならこれは不可能犯罪だ。
いくら別荘に近い石沢さんでもその短時間に全てを終わらせてここまで逃げるのは不可能だ。」
「確かにね…。」
「なら一体どうやって?」
「何かトリックがある筈だ。その不可能を可能にしたトリックが。」
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