無塵島殺人事件解決編

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「俺がこの島で育てられたのは五年程だ。 島民はみんな優しかった。 貧乏な島だったが、島から鉱石が出てきてからちょっとはマシな暮らしが出来るようになった。 だがその噂を聞いて島にやって来たのがあの二人だった。 あいつらは島に上がり込んで乗っ取るだけで無く、鉱石を独占するために島に火を放ったんだ。」 「酷い…。」 「ならなんであんたは無事だったんだ…?」 「住民は皆殺されたが、俺と母さんは何とか逃げきれたんだ。 でも母さんはズタボロで、俺を抱き抱えて走るのがやっとだった。 自分もそう長く無い。 それを悟った母さんはあいつらの船に積んであった樽に俺を入れて、海に流したんだ。 あなただけでも生き延びて…と母さんは言い残してな…。 樽には少なかれど食料が入っていた。 だから飢え死にする心配は無かった。 それに早い段階で陸地に着けたのも幸運だった。 身元不明だった俺は警察に届けられ、すぐに施設に入れられた。 そこでの生活は地獄だったよ。 周りには馴染めず、ただ浮いた存在で、大人達は連日俺に事情を聞いて来る。 思い出したくも無いのにずっと…。 しばらくしてからあいつらの話しは聞いたよ。 島で発見された鉱石を流して資産家になったって事もね。 許せなかったよ。 俺から全てを奪ったあいつらが…。 成り上がりの人生を送ってるなんてな。 俺はあいつらを殺した事を後悔なんかしていない。 死んで当然の奴らさ。」 「それは間違いだよ。」 「何…?」 「死んで当然の奴なんて居ない…どんなに罪を重ねてもそれを償う為にこれからはあるんだ。 藤堂さんは言ってたじゃないか! 自分のした悪行を償う為にって…。 あんたの母さんが命懸けで守ってくれた命を…あんたは復讐の為に汚してしまったって言うのかよ? あんたの母さんはそんな事させるためにあんたを生かしたと本気で思ってんのかよ!?」 「…。」 「あんただけでも幸せに生きて欲しいって言う母親の愛情だったんじゃないのかよ…? 藤堂さんだって、やり直そうとしてたんだ。 あんたもやり直せよ! あんたを生かしてくれた…母さんの為にさ。」 「俺は…。」 石沢はしゃがみ込みうなだれた。 「船が来たわよ!」 鷺森が浜辺を見ながら言う。 「復讐の炎でまた島は燃えてしまった。 でもこの島が燃える事はもう無い。 二度と…ね。」
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