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「恐らく君達は勘違いしてると思うけど、そのむじんとうのじんは塵と書くんだ。」
「それで無塵島…か。」
「なんでそんな名前なのかな…?」
遠慮がちに華夜が聞く。
「昔…。
あの島は原因不明の火事で全焼したんだ。」
「ぜっ…全焼!?」
「そう全焼。
昔は小さな集落もあり、人も居たらしい。
けど、その火事でその集落は燃え…住民は焼け死に…そうして火が沈下した後には、白骨や住居の焼け跡も無く、それこそ塵一つ無かったそうだ…。」
「…。」
「今でこそ人が探索に訪れる様になって随分手を加えられているけど…。
当初は本当に何も無かったらしいよ。」
「へー!
小城君詳しいんだね!」
「別に…。」
「小城の父さんはこの国が誇る名医なんだ。」
「この国が誇るは明らかに言い過ぎだ…。
僕はそれを次ぐ気は無いし、だから父さんとも違う。」
「でも、空手家になるつもりも無い…だろ?」
「それは、君もだろう?
だから僕にわざと負けたんだろう?」
「へへ…。
何でもお見通しだな。」
「えっ…?
わざと?」
「いやぁさ、大会で優勝したらその後はその手の道に進まなきゃなんねぇだろ?
俺はあくまでも護身術の為に身に付けたのになんか面倒だし。」
「僕もそのつもりだ。
空手家にもなるつもりは無い。
でも君との決着には興味がある。」
「二人って何か宿命のライバルって感じ。
ね、華夜。」
「君が竜之介の幼なじみの。
話しはよく彼から聞いていたよ。」
「げっ…。」
「私の事を?
いやぁ…そんな。」
「口うるさいお節介女だって…。」
「いや…それはその…。」
「もぉ!
竜~之~介~!」
「また始まった…。
二人の夫婦喧嘩。」
呆れた様な絵里と、由奈。
「誰が夫婦だ!」
「私はそんなんじゃないもん!」
「二人…仲が良いね。」
「だから違う!」
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