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同時刻、魔族領と人間領の境界線。ここは魔族と人間の戦闘が特に激しい場所だ。そんな戦場を、一人の騎士が刃渡り2メートルはある大剣を片手に一本ずつの二刀流で切り進んでいく。彼の名前はキリア。千年に一人と言っても過言ではない天才騎士でもう一人の主人公である。
しばらくして、法螺貝の音とともに全軍撤退していく。
「いやぁ~。今日もいい働きぶりだったな、キリア」
「いえ。今回の戦闘中、剣の動きが少し鈍かった気がする。あと、コンマ2秒は早くできた…」
「…相変わらず細かいヤツだな」
仲間の騎士とともに、軍の駐屯地に戻っていく。
戦略会議の行われているテントから、軍士が暗い顔でキリア達のもとへと駆け寄ってくる。
「た、たいへんだぞ!」
「どうしました、そんな顔して。浮気でもバレたんですか?」
「かぁ~、とうとうやっちまたのかぁ」
「ああ、実はつい先日の事が…、て違うわ馬鹿者!それに私は独身だ!」
ちなみにこの軍士、今43歳だ。いい人なんだか、軍人となるとそうそう結婚もできないと言うことを見事に体現している。
「冗談はさて置き、何かあったんですか?」
「ああ。今回の作戦が我々の戦闘を囮に、ダルク将軍が魔王城を制圧するというものだったな?」
「…まさか!」
話を聴くキリア達の表情が強張っていく。ダルク将軍はキリア達の所属する部隊の隊長でもあり、見習いの時には指導も受けた恩師だ。
「結果は魔王と相討ちだったようで、致命傷を負ってはいたがなんとか帰還したらしい。だが、魔王はまだ生きているらしい。そして、ダルク将軍の戦線復帰は…」
「そんな…」
先ほどまでの活気は消え、暗い空気が漂う。
「…魔王」
消え入りそうに呟く。その声には、強い怒りがこもっていた。
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