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「魔王?ああ、魔王だったらオレのことですが?」
「はい?」
つい声が裏がえってしまう。
「おっ!そろそろ頃合いだな…」
そう言いながら、かまどからピザを取り出す。こんがりと焼けめがついていて、なんとも美味しそうだ。
「今皿を出しますからちょっと待ってて下さい」
そう言って自称魔王は戸棚から皿を二枚とピザカッターを手に戻ってくる。
「いやぁ~、すみませんね。なにぶん他の者は出払ってましてね、今はオレ一人なんですよぉ~」
「そ、そうですか…。ところで、アナタが魔王とは本当なのですか?」
「何ですか~。疑っちゃてるんですかぁ~?」
「まあ、ワシも今までの人生で魔王に会うというのは今回が初めてなもので…」
「なるほど~。アナタは今回、わざわざオレを探してここに来たと?いやぁ~、なんだか照れちゃうなぁ~」
まあ、魔王討伐が本来の目的だしあながち間違ってもいない。しかし、ダルクにはこの男が魔王であるとはどうにも思えなかった。
「なんか信じてないみたいですね」
「ま、まあ。なんだか普通の若者のようで、魔王と言うからにはもっと覇気に溢れた感じかと…」
「仕方ないじゃないですか。オレだって魔王やりたくてやってるわけじゃないんですから」
「?」
「いやね、オレじゃなくてオレのカミさんの親族が魔王の家系だったんですけど、カミさんの家族が男いないもんで、その夫ということもあってこうして魔王やることになったんですよ~」
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