地獄への道

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俺の部署は色んなところで優遇される。 住む場所は提供されているし、給料とは別に食費も支給されている。 交通費もまたしかりだ。 仕事柄天国、御浄土、地獄、ユートピアなどいろんなところに足を運ぶため、交通機関には俺達の顔が登録されている。 いわゆる顔パスで俺と、ツレがいればツレも交通費が免除される。 しかも高給とりだ。 仕事さえこなせば夢のような生活が送れるというわけだ。 こんな部署に振り分けられるのはかなりのエリートコースを突っ走ってきた奴らだ。 狭き門を必死にくぐり抜けてきたのに自主退職して人間になろうなんて奴はめったにいない。 だから俺は部署ではかなりの変わり者だと思われている。 4年前まで、片倉も俺と同じ部署で働いていた。 「何で退職したんだ」 片倉が仕事をやめた後、そう聞いたことがある。 「ま、数少ない俺の後悔だよなァ」 答にならないような返答をした片倉は、遠い昔を懐かしむような恥ずかしがるような悔やむような、なんとも言えない目で窓から外を眺めた。 答になってないじゃないかと問い詰めたい気にもなったが、出来なかった。 片倉は何でも屋で十分稼げる程の男だ。 能力面では申し分ないから何かやらかしたんだろうと睨んでいる。 片倉と違って仕事に関しては問題を起こしてない俺の職権を存分に使い、今は片倉と地獄行の列車に乗っている。
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