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俺は、外され者だった。
外れ者じゃなくて、外され者。
俺は外れ者という言葉のニュアンスが嫌いだ。
誰が好き好んで外れるもんか。
意味は違うと分かっていても、この言葉を聞く度にそう思ってしまう。
人ってのは、誰でも大概秘密を持っているものだ。
偶然人の秘密を知ってしまってもその秘密を受容して付き合いを続ける、そんなものだろう。
同僚にでかい蒙古斑があっても、威張ってる上司が家で虐げられていても、後輩が実は重度のマザコンでも、とりあえず付き合いは続いていく。
……でも俺の秘密を知った人間は、ほとんど皆俺から離れていった。
今の職場でも万が一俺の秘密がバレてしまうような事があれば、皆俺の事なんか捨ててしまうだろう。
無くすのは、怖い。
特に嬉しいことは一度嬉しいと感じてしまったら、それを無くした時の痛さは計り知れないものがある。
怖い。
怖くて堪らない。
俺はこの怖い世界から、抜け出したい。
死んだ人間は殆どがどこかに案内され、残りの少しの人々は死後の案内センターに勤めることになる。
その中のほんのちょっとの人だけが、案内センターのエリート部署に勤めることが出来る。
この部署が死んだ人間の案内を実行する。
この部署に勤める以外の人達は、その他事務や各所の管理、案内センターの中にあるスーパーや服飾店やその他諸々の運営等を担当する。
案内センターはただの職場ではなく、一つの国のようなものだと説明した方が分かりやすい。
俺は案内センターで暮らしている。
生前いた世界と生活環境自体は殆ど変わらない──らしい。
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