109人が本棚に入れています
本棚に追加
"らしい"というには理由がある。
実の所、俺は生きていた時の事を覚えていない。
本当に生きていたのかすら疑わしい。
疑わしいんだが、とにかく俺は死後の世界における"少し"の中に振り分けられた。
秘密のおかげで外され者だった俺は、俺の秘密を隠し通せるような環境で働きたかった。
だから、殆ど自分の事だけにしか興味を持たないような奴らが勤める部署をひたすらに目指した。
その結果"少し"の中の"ほんのちょっと"に入りこむことができた。
この部署に来るまで知らなかったけれど案内センターの職員にだけ、もう一度生きた人間になるチャンスが与えられているらしい。
しっかり働けば生きた人間になれる、つまり生きた人間になるにはお金が必要だ。
有り得ない程の金額だから、その夢を叶える事が出来るのは俺のいるエリート部署のみだと言われている。
――おぼしめしだ
そう思った。
誰のかは知らないけど。
俺は必死に働いた。
そのおかげで、今回でちょうど生きた人間になれるだけの給料が貯まる。
外され者の生活からも、ダメダメだと言われる生活からもおさらばだ。
最後の仕事がこんなに素敵なおばあちゃんでよかったと思っていた。
どんなに遠いところでも、丁寧に元気づけながら案内しようと思っていた。
「優さんのところへ行きたい」
……優さんなんていうところがあるの?
最初のコメントを投稿しよう!